私探しゲーム 増補 (ちくま学芸文庫 う 1-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (1992年6月1日発売)
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本棚登録 : 243
感想 : 15

1992年刊(初出1980~88年)。著者は東京大学文学部教授。◆①単純な男女二項対立が如何に議論を粗雑にするか。男・女とも収入・教育・仕事・経験・容姿体格体力等、様々な属性において様々な特質を有している。いうなれば、男女だけの二項対立では変な結論、ないし著者の決め付けを不可避にする。この判り易い悪例。②西欧近代と日本近代とはその内実に多大な異質面があるのに、恰も全く同じであるかの如き分析視座の粗雑さ。性・愛・結婚の三位一体というなら中世の状況やC教等宗教の議論に入らざるを得ないが、全く皆無。
③悪い意味で、エビデンス軽視の社会学の例。教育社会学につき統計的手法、特に相関関係に関し、要素の重要度の重みづけを検討する重回帰分析等の方法論・説明(苅谷剛彦や志水宏吉らのチーム)を知ると、説明がこんなんで良いのかと言いたくなる程。殊に米国固有事情が措定される「アメリカン・カップルズ」の分析を、何の躊躇も、何の理由付けもなく自分の説明の為に引用する等理解に苦しむ。◆著者ならイスラム文化をどうこき下ろすのか。見てみたい。日本以上に苦しんでいる人々が世界に何億人もの規模で存在していそうですからね。
◆加谷珪一著書での「タレント学者」の最たるものか、◆どうでもいいが「ハウスマヌカン」「ナウい」といった、時代を感じさせる用語がちらほら。また「小泉今日子より菊池桃子の方が人気がある」と小泉ファンが聞くと怒髪天になりそうな箇所など、危うい発言も散見。◆逆に「商品論」「百貨店論」等は読める。というより余計な主張をさせず、分析に特化すればまともなものが書けるんだなと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2017年1月24日
読了日 : 2017年1月24日
本棚登録日 : 2017年1月24日

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