夜中の薔薇 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1984年1月9日発売)
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本棚登録 : 1006
感想 : 98
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台湾での飛行機事故による急逝。その直前直後に世に出た文章を含む、稀代の随筆巧者による珠玉の随筆集。そういえば「父の詫び状」も凄く良かった。
そしてあらためて著者の年齢を知って驚いた。昭和5年生まれの亡父よりさらに1歳年長だった。
テレビ等でリアルタイムで拝見した記憶もある生前の姿が、不運な急逝を境に、それ以降「更新」されることなくロックされたまま印象に残り続けていたこともあるのだろう。漠然と「ご存命なら80歳くらいだろうか」と思っていたより実際には遥かに古く、まさしく「昭和ひとケタ」ド真ん中の世代の方だったのだ。
そしてそれにしては、お書きになる文章の内容やリズム、そして感性が、やはりお若い。いや、近代的、先鋭的と云おうか。要は、亡父と同じ世代の人間が同じ時代に書き残した文章だとは到底信じられない。
中でも「手袋をさがす」には甚く感服。これは再読しなくては。三十を過ぎた息子にも強く勧めたい。
久し振りに他の著作も読み直してみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2023年12月28日
読了日 : 2023年12月28日
本棚登録日 : 2023年12月28日

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