いまを生きる [DVD]

監督 : ピーター・ウィアー 
出演 : ロビン・ウィリアムズ  ロバート・ショーン・レナード  イーサン・ホーク  ノーマン・ロイド 
  • ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
3.93
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本棚登録 : 1318
感想 : 213

 この映画の中で最も印象深かったのはその締めくくり方だ。教育をテーマにした作品では「生徒のよき理解者である先生」が最終的には「頭の固い先生たち」を説き伏せてハッピーエンド、というパターンが多い。『金八先生』や『ごくせん』がそうだろう。しかしこの作品はあくまで現実的だ。「死せる詩人の会」のメンバーは保身のために、気持ちいいほどに仲間を裏切る。そして「生徒のよき理解者である先生」は生徒に身を売られ学校を去ることになる。だがまったく希望がないわけではない。ラストの授業シーン。キーティングがかつて生徒たちにやって見せたように、生徒たちは机の上に一斉に立ち上がりキーティングへの敬意を表明する。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、その判断が視聴者に投げられた形で幕を閉じている。キーティングの教育方針は正しかったのか?教育において重視されるべきは生徒の自由を尊重することなのか、それとも社会的地位を約束するためのエリート教育なのか?これは現実に私たちが考え続けなければならない問題である。

 この問いに対する私の答えだが、それでもキーティングの教育は正しかったと思う。教育心理学の授業で「フォアクロージャー」という言葉を学んだ。これは青年期に親の言いなりになって生きてきたためにアイデンティティを確立できないまま大人になった人間を指す言葉である。このような人は年齢を重ね社会的責任を持つようになった後になって、今の自分と理想の自分との間のギャップに悩むことになるパターンが多い。そのようにならないためにも、キーティングの教育方針は若いうちにアイデンティティを確立しておくために必要な教育だったと思う。ただ彼はもっとニールの親と密な関係を作っておくべきだったのだと思った。ニールの初公演が終わった後、無理にでも彼の父親を引き止めて話をするべきだったのだろう。子供の成長のためには、親との関係だけでも教師との関係だけでも不十分だ。周りの大人たちが協力して子どもを見守ることが大切だと思う。

 キーティングの授業内容も興味深かった。詩の授業においては、先人の優れた作品を吸収することも大切だが、自分の言葉で詩を語ることも大切だという内容は、『山びこ学校』や『フリーダム・ライターズ』と通じるメッセージがあったと思う。自己を見つめ、望ましい自分を作り上げていくという思春期の子どもたちにとって必要なプロセスを達成するためには、言葉を通じて自己表現させることが有効なのだと改めて感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未分類
感想投稿日 : 2013年7月1日
読了日 : 2013年7月1日
本棚登録日 : 2013年7月1日

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