一文一文が独創的ながら的確。例えば、黒鍵の上を歩いているような男だとか、顔を旅行できるだとか。同時に、全体としてのうねりにも引き込まれ、圧倒される。
類型化した理解というのは追いつかなくて、読めるのだけれど分からない、でも引き込まれるというところになる。精度よく丁寧に書かれたものから「分かる」ような何かを見つけ出すのは困難だけれど、それでも入ってくる。
「好きな男ができた、行動は完全に彼に引きつけられている、そのことを自分で認められず悪い感情を抱いている」なんて構造が一方でミエミエなのに、一方では移入して狭い視野を共有せずにはいられない。そして現実・建設的な思考・妄想の境界が崩れていく。
「23歳」というモチーフも印象的。あとは、金目当てだとわかった時のみじめさとか、処女のこじらせた欲求だとか。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年3月31日
- 読了日 : 2017年3月31日
- 本棚登録日 : 2017年3月31日
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