1995年紫式部文学賞受賞作品。
「吉本」ばななさん時代の本。
文庫化して初版平成9年のもの。
久しぶりに押入れから出した。
夏になるとよしもとばななさんの本が読みたくなる。しっとりした空気、キラキラ輝く太陽…夏特有のこの雰囲気を的確な言葉で表してくれるのは、ばななさんだけという気がして。
『アムリタ』を初めて読んだのは大学生のころ。23年も前なんだ…
この物語を読みながら友達との楽しい遊びや旅行、一日が終わる夕日の物悲しさと最大級の美しさ、二度と訪れない儚さや切ない感覚にキューンと胸が締め付けられたり。
読みながら忘れていた感覚が蘇った。
今は夕日が沈む頃バタバタと食事の用意している。日常生活を刻むことに必死でキューンとする時間はない。
でもね、子供が独り立ちするまで期間限定。後で振り返ればこれも貴重な懐かしい甘い時だったとなるのだろう。
主人公朔美は、今まで何気に過ごしてきたことも妹の死や強く頭を打った事故によってそれらを機に思考が変わり出す。
当たり前のことなんてなくて、様々な出来事も人との出会いも縁や何か力が働いている。
人生辛いこともある。でも時々人生の中で出会う幸福感を得られるもの=甘露、アムリタなのかな…と。
ハッと気付かされたのは何気に飲んでいる水も命を繋げるものだということ。ほんとうに何気に自分自身を大切にしているんだ、私は私が愛おしいんだって気付いた。
ばななさんの物語を読むと日常生活の一つ一つのことに意味があって美しさを感じられる。丁寧に生きたいと思う。
『アムリタ』を初めて読んだときの日記はもう捨ててしまったけれど、どんなことを書いていたんだろう。当時の恋人とも別れ、親や妹とも離れ、全く違う生活を営んでいる。
ただもう今は、摂食障害に悩んでいた自分自身が大嫌いな私ではない。
次読み返すとき、私は何を思うだろう。
- 感想投稿日 : 2020年7月8日
- 読了日 : 2020年7月8日
- 本棚登録日 : 2020年7月8日
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