ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290)

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  • 中央公論新社 (1972年6月1日発売)
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ルワンダの中央銀行に1960年代に赴任した服部氏の奮闘記。感銘を受けた。この時代に、軸がぶれずに大変なバランス感覚を持ち、国際社会の中でも必要なときにNOと言えるような著者はもっと知られるべきなのでは?彼の書いた他の著書も是非読んでみたい。きっとその後のルワンダの国内紛争には心を痛めていたのだろうなぁと思われる。

20220808 再販されたものの増補のみ読破
最初に読んだ時に気になったルワンダの国内紛争後に寄せた文が追加されていた。やはり公正な方なんだなというのがよくわかる追記分であった。

P.314
ツチ族虐殺を命じた者およびそれを実行した者は、許すべきでなく、逮捕し、裁判し、処罰しなければならない。しかし「愛国戦線」が主張するのは、これら犯人を「愛国戦線」に引き渡し、「愛国戦線」で裁判し、処刑するとのことで、これは第二次世界大戦後の勝者が敗者を裁く戦争犯罪者裁判の方式である。
裁判というからには、公正でなければならないが、勝者が敗者を裁くこと自体公正ではない。また、第二次再戦後の戦争犯罪裁判で見られたように、公正な証拠調べが行われる可能性はきわめて低く、裁判開始前から有罪と決められている結論に法的な衣を着せる儀式となりやすい。

P.322
今回の事件でもわかるように、世界はいまだ力が支配していることを痛感すべきで、ただ「平和、平和」と一国で喚いても、一人で祈っても平和は来ない現実を直視すべきで、弱者の悲哀は、ルワンダの惨状がまざまざと見せつける。また、国連憲章にもかかわらず、大国は気が向けば適当な大義名分を掲げて、武力で他国を攻撃することや、自分が気に入った他国の党派に直接に、または第三国をつうじて、武器を提供することが公然と行われているのが現実なのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2009年8月7日
読了日 : 2009年8月7日
本棚登録日 : 2009年8月7日

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