前科持ちになったことで世間から煙たがられ、人を信じられなくなった主人公。そんな主人公の過去を知っても温かく接する人々の存在に感動。また、泣かせるのが主人公と文通している弟の存在。弟はいじめられており、世間から冷たい目で見られる主人公とある意味で似たような境遇におかれている。弟は、主人公を見習って少しずついじめっこから逃げるのをやめようと考えるようになり、主人公はそんな弟の決心を知ったことをきっかけに、ほんとうの気持ちを隠して振る舞ってきた自分を振り返って悔いる。この兄弟は、一見は憎まれ口を叩き合う仲でも、支え合って生きてきたんだなぁとしみじみする。手を繋いで歩くシーンなど胸が熱くなる。
そして、最後のシーン。主人公の彼氏が、主人公に他の街に行って欲しくなくて、わざとお金を借りていた、というオチは読めていたが、それを伝えてハッピーエンド、になるかと思いきや、最後のシーンで目があったかのように見えた二人は実はそれぞれ違う方向を向いており、すれ違ったまま終わる……。この切なさは映像じゃないと出せない、映画ならではの深みのある表現だなぁと思った。
台詞として印象に残ったのは、自分探しの旅に出掛けるのではなく、自分を探したくないから旅のような生活を送っているのだ、みたいな台詞。自分が行動しないと生きていけない、嫌でも自分はここにいる。みたいなことを言っていた。
蒼井優ちゃんがとにかくかわいい。人に深く立ち入られそうになったときの、迷惑そうな表情がとてもうまかった。あれが苦虫を噛み潰すような顔、ということで苦虫女、なんだそうな。
- 感想投稿日 : 2020年6月5日
- 読了日 : 2020年6月5日
- 本棚登録日 : 2020年6月5日
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