ヤクザと原発 福島第一潜入記

著者 :
  • 文藝春秋 (2011年12月15日発売)
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感想 : 73
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普通の経済・法律の枠組みに収まらない反社会勢力は一体どういったロジックで上手く回っているのかといったことがずっと気になっている。単なる怖いもの見たさもあるが、自分がそういったことをしないにせよ、悪意を持ちルールを破る覚悟をしている場合にどういった手段が存在するのかということを知っておくことは、自衛のためにもなるのではないかと考えている。「サカナとヤクザ」という本を知り、読みたいと思ったが電子書籍が出ていなかったので、同じ著者のこの本をまずは読んでみた。

最初は反社会勢力と原発の関係は一体どんなものなのかと想像もつかなかったが、本書で取り上げられている接点は、そこまで特別なものではないように思った。まず、原発に限らず巨額の公共工事は反社会勢力が儲ける絶好のチャンスである。地元の意見をまとめ、街を代表し電力会社やゼネコンと交渉する。また、工事のための人員を出す。福島の事故の後は、事故現場に入るような人間を派遣するようなことろでも反社会勢力が出てきているようだ。原発にはタブーが多く、そのような性質は反社会勢力と相性が良い。

正直、タイトルから想像した内容からすると、個人的には期待はずれだった。原発作業員として事故後の福島第一復旧作業に潜入したレポートは貴重であり、ずさんな被爆量管理など、なかなか面白かった。一方で、反社会勢力との関係の話はそこまで多くない。本人も終盤で、もっと良い潜入取材が出来たのではないかとやや反省している部分がある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月8日
読了日 : 2018年11月3日
本棚登録日 : 2018年11月8日

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