あるキング

著者 :
  • 徳間書店 (2009年8月26日発売)
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天才とは、才能を有する人のことではなく、その才能によって人生を台無しにされてしまう人のことをいう、というのは、誰あろう私の言葉である。
絵描きの天才は、絵を描くことで身を滅ぼし、音楽の天才は、音楽によって身を滅ぼし、愛の天才は、愛によって身を滅ぼす。野球の天才は、やはり野球によって人生を滅ぼすのだ。故に、本当の幸福は凡人にのみ与えられる。
この小説の主人公は王様である。そして天才である。生まれてきたときから、誰かに注視され続ける存在である。味方がいて、敵がいて、信者がいて、従者がいて、友がいて、過酷な運命がある、否の打ち所のない、正真正銘の王様だ。そしてやはり、才能によって人生が台無しになってしまう。正真正銘の天才だ。最後に生まれてきた子供は、王様であり天才である男の力によって、天才でも王様でもない、凡人としてとても幸福に生きて死ぬ未来を授かったのだろう、と私は思っている。そうでなければ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 伊坂幸太郎
感想投稿日 : 2010年3月23日
読了日 : 2010年3月23日
本棚登録日 : 2010年3月23日

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