スローフードな人生! -イタリアの食卓から始まる-(新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2003年3月31日発売)
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感想 : 4
5

腕時計を持たない。次の約束のために今の時間をおろそかにしたくないから。
携帯電話も持たない。通話じゃなくて会話をしたいから。
煙草も2年前にやめた。
最近若い女性が多く吸い始めたけど、それを見てすごくとても醜いと思ったから。

車は未だに '88年型のローバーミニ。
「AAA」だの「AAAA」だの誰かが決めた規準じゃなくて自分の好き嫌いで選びたいから。

こんな私の生き方もあるいは「スローフードな人生」なのかも知れない…と、(手前味噌だが)この本を読んで思った。


端的に言ってしまえば、「『食べること』を通して世界の有り様を考えよう」というのが「スローフード運動」だ。「スローフード」という言葉を「ファーストフード」と対比させれば(正確ではないが)感覚的に解りやすいだろう。

イタリアの片田舎ブラに本拠を置くNPO「スローフード協会」について書かれたくだりは、町おこし村おこしの活動にとても参考になる。特にブラの村祭りの様子はとても楽しそうで美味しそうで、わがまちのイベントにもぜひ採り入れたいと思うアイデアがいっぱいあった。

また、この本は、これまで私が描いていたイタリアという国やその国民性についてのイメージを変えてくれた。たとえば国民の6人に1人が何らかのボランティア活動に携わっているそうだ。イタリア人が陽気なだけの怠け者だという噂は嘘だ。

エスプレッソコーヒーをを飲ませる『バール』がどんな町にもある。しかしそこは単なる喫茶店ではなく、地域の寄り合い所みたいな機能を果たしている。すごく田舎では採算がとれないので地域の人が交代で店主を務める。イタリア人が脳天気な個人主義者だという噂は大嘘だ。


それから、アグリトゥリズモ(農ある田舎の民宿)の話とか、殺人が増えたのは食べ物のせいではないかという話とかが、ユーモアあふれる口調で美味しい料理のレポートと一緒にちりばめてある。読んで損はない。

グローバル化とは世界を均質化するものではなく、その地域性や固有の文化をお互いが知り認め合うことでなければならないと、改めて強く感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年3月8日
読了日 : 2001年7月8日
本棚登録日 : 2020年3月8日

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