以前、表紙を見てとても気になった本。「グリコ森永事件」を題材にしていると知り、ますます気になったのだが、偶然学校の先生が持っていて、貸してくださった。
あの事件が起こった時、中学1年だったと思う。
自分の記憶にあるのは、「大人の、しかもグリコの社長が、そんな簡単に誘拐されるかなぁ?お芝居くさいよね〜」とか、「毒入りポッキー見つけたらどうしよ?」などといったアホな中学生同士の会話。
関西の事件、自分はまだ子ども、という相乗効果で遠い出来事のようだった。深刻さが多少なりとも分かったのは、それまでまるのままだったお菓子の箱に、フィルム包装がされるようになったことからだろうか(…作中でも、主人公の1人である新聞記者の阿久津、の姉が言っていたが)
序盤はなかなか物語に入っていけなかったのだが(登場人物が多くて、老化現象の頭に記憶できず読み進められない)、真ん中あたりからぐいっと持っていかれた。もう、これが事件の真相なのでは⁈と思ってしまうほどのリアリティがある。
あの未解決事件が、あまりにもお粗末な個人の欲の果てにあった…という感じだったが、存外犯罪なんて、そんなものなのかもしれない。
後半は、録音テープの声に使われた2人の子ども(正直、録音テープのことは読むまで忘れていた)の行方に重きが置かれている。
大人の犯罪に巻き込まれた子どもの一生を思うと本当にやりきれない。
2人の主人公、新聞記者の阿久津と、テーラーの曽根。
どちらも逃げずに事件と向き合う姿勢が清々しい。仕事に対しても、新しい時代のプロフェッショナルという感じで、好感がもてる。
2020.2.24
- 感想投稿日 : 2020年2月26日
- 読了日 : 2020年2月24日
- 本棚登録日 : 2020年2月24日
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