困ってるひと

著者 :
  • ポプラ社 (2011年6月15日発売)
3.99
  • (485)
  • (634)
  • (335)
  • (58)
  • (18)
本棚登録 : 3577
感想 : 767
5

この本が売れると彼女の生計が立つ~福島の山奥ムーミン谷で屈折しつつ育った更紗は日本一の合唱部を抱える女子校で規律に反発し,一浪の後,上智大学でフランス語を学ぶが,樋口陽一の著作でビルマ研究者の道を目指す。卒論を書いて大学院進学が決まり,ビルマ国境に近い難民キャンプで体調の異変が尋常でないことを知る。全身が腫れ,どこもかしこも触れられただけで針で刺されたような激痛が走り,手足は潰瘍だらけ,脂肪織炎だらけ,すべての関節がブリキになったように強烈に痛み軋み動かない,目は乾き腫れ,口の中は炎症で真っ赤,髪の毛も抜け,38度以降の熱が下がらない。2009年5月からの4ヶ月,福島の大病院で皮膚科・耳鼻咽喉科・消化器内科で検査を重ね,膠原病内科の医師に自信がないと云われて,インターネットで元ハーバード自己免疫疾患の専門家である大学付属病院に電話を掛け,これでだめだったら死のうと決意した。気軽に応対した宇宙プロフェッサーは,とんがりメガネのハイパー説教大臣「パパ先生」の手で入院の手続きを進める。一度福島に帰って2009年9月28日から,オアシス619号室に入院。主治医は優しいクマ先生と決まり,幸福な出会いに感謝する。検査・検査で一月が経ち,東京郊外の特殊病院で入院患者の壮絶な状態に個室に隔離されキテレツ先生の診断を受けるが,皮膚筋炎と筋膜炎脂肪織炎症候群と名付けられた。勿論,原因は不明で治療方法も確立されていない難病だ。住民票のある小平市から書類を取り寄せて東京都の医療券を申請し,オアシスに戻ってステロイド一日合計60mg(健常者は副腎から5mg)投与が開始されたが,危篤となった。12月は衝撃の退院,零下15度の福島の掘り炬燵生活,ムーミン谷に福祉政策は届かない。悪化して再入院すると,鬱状態に陥り「難」の「当事者」となって死にたいと考え始める。身体障害者の認定は2級。難病の先達に訊くと,区役所なんかには行かないと云うが,行政からの援助を受けるために外出も儘ならない難病患者が居住地から書類を取り寄せるのも一苦労。2010年3月,大学に休学の延長を届けて帰ってくると,左のおしりが腫れ,やがて決壊。脂肪が流れ出た跡には大きな洞窟が出現。滅菌ガーゼとおむつを買うのも一苦労。電車に乗れない難病のお兄さんと交流している内に,恋心が芽生え,デートしたいという気持ちが生きたいという意志を形作っていく。いつまでも入院はしていられず,小平から通ったり,福島から5時間掛けて通院することもできない。病院の近くに部屋を見つけて,区からの支援を受けながら生活をするため,秘密の引っ越し作戦,小平の部屋の整理を秘密裏に進めていく~東京医科歯科大学付属病院かな? 8月22日と24日に車で前を通ったぞ。なるほど,評判になる筈で,今も生存中だが,本が売れて生計も立つだろう。311の震災で母親の実家はなくなったも同然。難病のこと,フクシマのことであちこち呼び出されている。この後,動ける間は講演で喰っていけるというもので,良かったねえ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年8月25日
読了日 : 2011年8月25日
本棚登録日 : 2011年8月25日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする