素晴らしい青春映画。漫才、ボクシング、ヤクザ、女など、対象は違えどなにかに賭ける若者たちの志と失敗を鮮やかに描く。
乾いた演出、編集、久石譲の手による音楽、すべてがはかなさと切なさにあふれている。
たけしは出でおらず、ヤクザの世界もサブ的な装置。その重しがないことが、それぞれの青春群像を印象づかせることに成功している。唯一ステップアップをしているのが無垢に己の道を信じた漫才師というのも、たけし事故直後の第一作ということを考えるとまた感慨もあるというもの。あらすじにするとなんでもないが、見ると奥深い。
また、ジムの会長、ヤクザの親分、どれもが清濁併せ持った「普通の人」であるのがいい。分かりやすい人間は教師位のものだ。
各役者陣。金子賢は演技イマイチ、安藤政信は寡黙な役に合っていた。ボクシングジムの会長(山谷初男)・コーチ陣はみんな達者だった。喫茶店のお母さんも人情味があっていい。石橋凌の貫禄はさすが。
なお、冒頭とラストの自転車シーンの構図に込められた意味を解説しているサイトがあり、参考になった。言葉は嘘をつくが、行動は嘘をつかない。それが人であり、映画なのだ。
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- 感想投稿日 : 2022年5月5日
- 読了日 : 2013年4月28日
- 本棚登録日 : 2022年5月5日
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