凍りのくじら (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2008年11月14日発売)
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本棚登録 : 26507
感想 : 2294
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何度でも読み直したい作品

常に現実感がなく、穿った視点を持ち時には他人をこき下ろしがちな主人公、理帆子。
はじめは冷静で達観している理帆子の考えがただ面白いなという印象だったが、話を読み進め、状況の変化によって理帆子の感情が揺れ動く様子だったり、過去があかされたりするにつれ、どんどん理帆子のパーソナリティに深みがでて、理帆子のことをすごく好きになった。

この物語の核となるのは父とドラえもん。
理帆子の心にはいつもドラえもんがあり、それは父との大切な思い出でもあり、彼女にとってのひとつのバイブルのようなもの。
そして父の自殺を止めなかったという罪業感もまた、彼女に深い影響を与えていたのだと思った。

別所あきらという男の子との関わりを通して孤独だった理帆子の心が少しずつ癒えていく様子は胸が温かくなったし、訪れる母の死に対しての思いから年相応の理帆子が見られたことには感動した。家族を失ってしまうという不安に酷く共感し、涙を流しながら読んだ。

後半にかけてのまさかの展開と結末に驚きの連続で、さすが辻村さんだなと思って読んでいた。
なぜ凍りのくじらというタイトルなのかというところまでしっかり回収されてとても良い読了感だった。


スロウハイツの神様を読んだ後だったのであるシーンでおっとなった笑 辻村さんの作品の醍醐味を味わえた!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月6日
読了日 : 2023年11月21日
本棚登録日 : 2023年7月11日

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