シューマンの指 (100周年書き下ろし)

著者 :
  • 講談社 (2010年7月23日発売)
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本棚登録 : 2306
感想 : 501
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「このミス」でランクインしていたので、手に取った作品。全編音楽をモチーフにしたミステリーということもあり期待大ではあった。
クラシックが好きで、自らもピアノを弾く高校生の私が、高校三年生から大学一年生までの青春時代を回想した作品。
高校一年生にして有名ピアニストの修人との関係を軸に、高校で起こる「ある事件」の真相に迫る・・・・。

音楽がモチーフになっている分、演奏の描写や、そこから流れ出すメロディーを描く事にこの作品の醍醐味があると思うが、イマイチその部分が描ききれていないと思った。
文学で音を感じさせるという、非常に高度なテクニックが要求されることに、あえて挑戦したのだろうが、作家の力量がそこまで追いついていないように思った。
ピアノ演奏を表現する気負いがあったのか、かなり古い言葉を羅列はするものの、音楽的表現には到らず、言葉をこねくり回している感じがして、小説の見せ場であるにも関わらず、冷めてしまう。

結構分けの解らない表現もあったりする。

また、メロディーから広がる世界の情景描写においても、結構ありきたりでシューマンの音楽性を表現しているとは言いがたい。

ミステリーのオチとしては、まあまあではあるが、音楽に魅せられた人間の狂気を、さらに追求すれば、読後感にゾッとする怖さを読者に提供できたのではないかと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2012年1月17日
読了日 : 2011年1月15日
本棚登録日 : 2012年1月17日

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