「このミス」でランクインしていたので、手に取った作品。全編音楽をモチーフにしたミステリーということもあり期待大ではあった。
クラシックが好きで、自らもピアノを弾く高校生の私が、高校三年生から大学一年生までの青春時代を回想した作品。
高校一年生にして有名ピアニストの修人との関係を軸に、高校で起こる「ある事件」の真相に迫る・・・・。
音楽がモチーフになっている分、演奏の描写や、そこから流れ出すメロディーを描く事にこの作品の醍醐味があると思うが、イマイチその部分が描ききれていないと思った。
文学で音を感じさせるという、非常に高度なテクニックが要求されることに、あえて挑戦したのだろうが、作家の力量がそこまで追いついていないように思った。
ピアノ演奏を表現する気負いがあったのか、かなり古い言葉を羅列はするものの、音楽的表現には到らず、言葉をこねくり回している感じがして、小説の見せ場であるにも関わらず、冷めてしまう。
結構分けの解らない表現もあったりする。
また、メロディーから広がる世界の情景描写においても、結構ありきたりでシューマンの音楽性を表現しているとは言いがたい。
ミステリーのオチとしては、まあまあではあるが、音楽に魅せられた人間の狂気を、さらに追求すれば、読後感にゾッとする怖さを読者に提供できたのではないかと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2012年1月17日
- 読了日 : 2011年1月15日
- 本棚登録日 : 2012年1月17日
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