仮面の告白 (新潮文庫)

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自身の性的嗜好に戸惑いつつも、最後には諦念と同性が好きであることを受け入れる少年「私」
その背景には太平洋戦争真っ只中の環境もあったことを巻末の解説で知った。
だが、ここまで赤裸々に人には言えない内面を告白できる主人公は凄いと思う。そして肉付きのよい若い男の腹や腋窩を刃で刺すという想像力が豊かである。

「どうしてこのままではいけないのか?少年時代このかた何百遍問いかけたかしれない問いが又口もとに昇って来た。何だってすべてを壊し、すべてを移ろわせ、すべてを流転の中へ委ねねばならぬという変梃な義務がわれわれ一同に課せられているのであろう」(p153)
無理に変わる必要などないのかもしれない。人と比べることは無駄であり、幸せにならないだろう。多感な少年時代には他の人と考え方が違う、性的嗜好が違うことによって悩み悶えていたが、それを徐々に受け入れることが大人に近づくことなのだろうか。

三島文学は美しい文体であると聞いてはいたが、ここまで均整のとれている文体は読んでいても快かった。他の初期作品も読もうと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 三島由紀夫
感想投稿日 : 2023年9月2日
読了日 : 2023年9月2日
本棚登録日 : 2023年8月24日

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