《私の成人式の時も父は何もしませんでした。何をどうしたらいいのか分からなかったのでしょう。ありがたいことに会社の同僚の方が晴れ着を貸してくれたので、朝早く美容院で着付けをしてもらい、晴れ着のまま自分で車を運転して会場に行きました。式から帰宅した晴れ着姿の私を、父は嬉しそうに、でもどう接したらいいか分からない様子で見ていました。そんな父から出てきた言葉は、手話で〈きれい〉だけでした。》(p.137)
《あぁ、また正論でした。私は「親に感謝していない」とは一言も言いませんでした。しかし、つまりその人の発言は、「それ以上聞きたくない」を意味しました。》(p.163)
《私には物心ついた頃から心の底から晴れやかな日なんてありませんでした。いつもどこか不安で、憂鬱で、悲しかった、寂しかった。それでも、それだけじゃなかった。心配でも、不安でも、つらくても、それでも母がいてくれるほうが、私はずっとずっと幸せだった。本当に、たくさんの愛情と慈しみ、思いやりをもらっていたから。これは綺麗事じゃなく、まぎれもない私の想いです。》(p.204)
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- 感想投稿日 : 2020年11月4日
- 読了日 : 2020年11月4日
- 本棚登録日 : 2020年11月3日
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