公務員ってなんだ? ~最年少市長が見た地方行政の真実~ (ワニブックスPLUS新書)

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  • ワニブックス (2012年12月8日発売)
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感想 : 26
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「身近なことって実はあまり知らないんだな」
この本を読んでいて何回か思いました。
普通の生活の中で、自分と役所の関係性を考えることはあまりありません。
考える機会もありませんし、でも実はそこに大きな課題が内包されていることをこの本を通して思いました。

千葉市長の熊谷俊人市長が財政的にも、市民の信用的にも最悪という状況のなかで就任してから行った施策、そしてその施策にはどういう意図があるのか、また課題や想いといったものが書かれています。


とても、興味深いと思ったのは熊谷市長が就任した際に前体制の色を全部消すということをしなかったという部分。具体的には前体制の副市長を慰留した部分。 本書でも書かれているように、市長の周りを熊谷市長に近しい人で固めてしまった方が、新しいカラーを打ち出しやすいはずですし、改革もスムーズに行えるかもしれません。しかし、既存のベースを大事にし、職員の混乱が必要以上に大きくならないようにとの思いからのこのような行動に至ったそうです。この布陣を「最強布陣」と表現していたのも印象的でした。

この行動にも代表されると思うのですが、この市長は「縦軸」つまり、過去から未来への時間軸と「横軸」つまり職員同士、市民同士、自治体同士または役所と市民の人同士のつながりのバランスを非常によく考えているように感じます。この施策で未来がどう変わるのか、過去の何がいけなかったのか、そしてそれに対し役所はどういうアプローチで臨んで、市民にはどういう変化が求められるのか。施策の説明すらしっかりとされない自治体がある中で、この「縦軸」「横軸」をしっかりと考慮した熊谷市長の説明は非常に説得力を持っています。

市民と役所は「ギブアンドテイク」の関係です。私たちは税金というお金を預けて役所はそのお金で自治体の未来を明るくする。そして、私たちは享受する。だから、市民と役所はもっと積極的に歩み寄る関係であるべきなんです。でも、互いに疎外感があるのが今の現実… その関係性の変化に私たちの生活の向上のキーがあるのではないか、この本に言われた気がします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 地方
感想投稿日 : 2013年7月7日
読了日 : 2013年7月7日
本棚登録日 : 2013年7月4日

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