文庫本の上巻の表紙に描かれている絵が何なのか全く分からなかった。「DIVE!!」という題名の意味も知らなかった。読んでみて、DIVEはダイビング、すなわち、飛び込みというスポーツ種目のことであり、文庫本の表紙の絵は、競技に使われる飛び込み台であることが分かった。
たしかに、「飛び込み」という種目はある。しかし、それはマイナー競技であり、私自身も、オリンピックの「今日の結果」的なダイジェストで観る以外に観たことはなかった。国内、あるいは、国際的な競技会ももちろん開催されているのであろうが、それが放映されているテレビを観たこともない。
「飛び込み」という競技をほとんど知らないのは、私だけではないはずだ。読者のほとんどがそれを知らない。それを小説のテーマにして読ませる、すなわち、知らないことを文章で理解させるというのは、かなりの力技だと思うが、この作品ではそれが成功している。オリンピックを目指す中学、高校の飛び込み選手を描いた小説であるが、ストーリーの中に、日本における競技の位置づけ(要するにマイナー競技であること)、競技場に関すること、飛び込みのルールに関すること、競技の進行と採点についてのルールなどが、さりげなく織り込まれており、読者は、「飛び込み」という競技がどういうものかを読んでいるうちに理解できるようになっている。
私が上巻の中で一番好きだったのは、オリンピックを目指す選手の一人である沖津飛沫が、競技会で敗れ、今後どうするかを考えるために故郷の津軽に戻り、恋人と過ごす場面(場面というには長いが)である。全般的に、割合と軽いタッチで描かれている小説の中で、この部分だけは、沖津飛沫の心を投影してか、重く描かれている。彼の悩みと、そして、その悩みの解消がよく描かれているような気がした。
これから下巻を読む。
- 感想投稿日 : 2024年4月9日
- 読了日 : 2024年4月9日
- 本棚登録日 : 2024年4月4日
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