全部で8編の短編SFを収めた、テッド・チャンの処女短編集。
テッド・チャンを読むのは、2作目の短編集「息吹」に次いで2冊目。「息吹」も傑作揃いだと思ったけれども、この「あなたの人生の物語」も傑作揃い(個人的には、それでも「息吹」の方が好きだけれども)。
SFにも色々な種類のものがあるが、本書の最後の短編「顔の美醜について」等は、一種の思考実験のようなものとしても読める。「カリー」という処置を施した者は、人間の顔の美醜の判断が出来なくなる。人は他人を見かけの良し悪しで判断する傾向が強いと思うが、カリー処置を受けた者は、そういった判断が出来なくなる。見かけの良し悪しで人を判断するのは、一種の差別だと考えると、このカリー処置を更に広い範囲に適用することを、つい、考えてしまう。人は人種・肌の色で差別されるべきではない、人は性別によって差別されるべきではない、人は体型によって差別されるべきではない、等々。顔の美醜を判断できなくする処置を施すだけの技術が確立された世界においては、きっと、人種の判断を出来なくする処置、肌の色を判断できなくなる処置、性別を判断できなくなる処置、体型を判断できなくする処置、等も可能であろう。そういった処置をすることによって、色々な意味での差別をなくすことが出来るかもしれない。でも、そのような処置を施された人は幸せなのだろうか、そのような処置を施された人は人間の持つ本能的な部分を捨ててしまっていないのだろうか、等という思考実験を展開することも可能だ。
それは、大げさに言えば、人間って何?ということにも繋がるような話だ。
- 感想投稿日 : 2022年2月18日
- 読了日 : 2022年2月18日
- 本棚登録日 : 2022年2月12日
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