家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇

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  • 新潮社 (2010年2月19日発売)
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喜劇、というよりホラーです。
2003年~2008年までの調査を元にした食卓の現実から見えてくる家族の今。
1週間の家族の朝昼晩の食事を撮影してもらい、
細かな状況を書き込んでもらう調査は、
協力してくれる家族なしには成り立たない。

事前調査で主婦が書いた自己評価の高さ
(実際はあるべき姿「家族には野菜たっぷりのバランスのとれた献立を用意している」とか)と、
調査後のヒヤリングで、実態と違うことを指摘された後に出てくる
言い訳(むしろ居直り)の言葉に激しい違和感を感じる。
日本語としての「てにおは」も、
そこだけを取り出した時の通りのいい文章は間違ってないが、
その状況の言葉としてあまりにも不似合いで気持が悪い。
自分や夫だけならまだしも、5歳8歳などの子供に
自己決定権・選択権を与え、自主性を尊重するのはどうだろう。
子供に判断できるだけの経験も選択肢も助言も与えられず、
「出しても食べないから出さない」(食べさせるのは疲れるからやらない)
「好きなものを選ばせて食べさせている」
(でも選べるのは既製品の揚げ物や菓子パンや冷食)
「子供が疲れて眠ってしまったので夕飯を作らなかった」(ネグレクト一歩手前)
この本を読んでいると、子供の空腹の訴えは、予期しなかった天災のようだ。
空腹になるまで用意をしない(そもそも冷蔵庫に野菜がない)ことに関しては、
また別の自分都合の言い訳があって、
目の前の危機(夜8時に突如として発生した子供の空腹)に対応するのに、
料理してると間に合わないから、
<strong>すぐ</strong>食べれる物でごまかされる子供。

毎日のことなのに。

一番きもちわるかったのは幼稚園の指導かなあ。
「<strong>子供に達成感を与えるために</strong>弁当には子供が好きなモノを
(残してしまう野菜なんか入れてはいけない)
食べきれる量だけ、入れてください」
本当にこんなこと言ってるんだろうか?
「克服」という要素のない「達成感」は無駄に「全能感」を与えるだけなのでは。

ただ少なからず自分自身も同じような献立や食べ方をしているわけで
気持がわからなくないこともないが、
でも今感じてる違和感はちゃんと残しておかないと、
このゆがみが平然と常識に移行して行ってしまう怖さがある。
学校教育って「私の肥大化」と「自己正当化する程度の日本語力」を与えるために、
行われたわけじゃないはずでしょ。

他にも立ち止まってしまう要素が山盛りあって、
いろいろ考えてしまった本でした。
http://takoashiattack.blog8.fc2.com/blog-entry-1954.html

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感想投稿日 : 2011年10月27日
本棚登録日 : 2011年10月27日

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