はしがきで「歴史とは現在と過去との対話である」というフレーズが登場するが、繰り返し述べられるこの一文に本書の大部分が表されていると思う。
ここでいう「歴史」とは過去に起こった事象そのものではなく、「歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程」と著者は定義している。
私たちが学校や書物で学んだ歴史は、歴史家の主観が多大に影響しており、「歴史的事実」と言われるものでさえ「解釈の問題に依存する」のだという。
これの意味するところを考えてみると、もし歴史における客観的事実を知りたいのであれば、過去に行われた歴史家の解釈に挑む、つまり対等な立場で対話するくらいの心構えで向き合わないと真の歴史の姿は見えてきませんよ、ということなのだと理解した。
述べられていることは全くもって正論なんだけど、日常を生きるのに忙しい庶民にとってみると、歴史に触れる際に常にこのようなスタンスで向き合わないといけないというのはなかなか難しいのではなかろうか。なので頭の片隅に入れておく、ぐらいの受け止め方がちょうどいいのかもしれない。
やはりある程度信頼できる人物が補助線を引いてあげる必要があるのだろうけど、カルトのように悪意を持って偽史をばらまく輩もいるからなかなか難しいところではある。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説以外
- 感想投稿日 : 2022年10月10日
- 読了日 : 2022年10月10日
- 本棚登録日 : 2022年10月10日
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