1000の小説とバックベアード (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2009年12月24日発売)
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本棚登録 : 735
感想 : 109
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聞いたことない作家さんでしたが、ぱらぱら捲ってみると作中に本の題名が沢山並んでいたので読んでみことにしました。
小説の中に、小説が出てくる作品は何故か惹かれます。
やっぱり本好きの性なんでしょうか。
登場人物がどんな本が好きなのかが分かるだけで、ストーリーの中では語られなかったその人物の1面が見られるような気がするからかもしれません。

最初は、あまり好みの文章ではなかったので読み辛いな~といった感想しか抱けなかったのですが、次々と繰り広げられる事件にぐいぐい惹き付けられ、最後は物語に没頭していました。
ストーリーは勿論面白いのですが、ぽんぽんとテンポが良い会話がとても面白いのです。
例えば、いきなり主人公の前に表れたスーツ姿の謎の美人配川ゆかりとの会話。ズバズバと歯に衣着せない言い方をする配川ゆかりと、オブラートだが必要最低限の的確なことを言う主人公とのやり取りは、一見喧嘩しているようだが、それをむしろ本人達は楽しんでいるような良いテンポとなって、読んでいてとても気持ちがよかったです。

一方、極度の機械オンチでDVDプレイヤーもろくに使いこなせない探偵一ノ瀬は、飄々とした喋りでたまに主人公の痛い所を突き、主人公をからかうようなことを言う。主人公も負けずと言い返したりするが、結局言い負かされてしまい黙りこくったり、話題を変えたりすることでしか会話を続けることは出来ない。しかし、主人公が怒ろうと黙ろうと決して感情的になることない飄々とした一ノ瀬の態度は、子どもが何をしようとも暖かく見守っている、親のような優しさが感じられました。それがどれだけ厳しいことを言っていても、心地よいじゃれあいに見え、読んでいて楽しかったです。

物語の内容もとても良かったです。
何かを表現することの素晴らしさを教えて貰った気がします。
私も何か書いてみたいなぁ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年11月30日
読了日 : 2014年11月30日
本棚登録日 : 2014年11月30日

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