33年後のなんとなく、クリスタル

著者 :
  • 河出書房新社 (2014年11月26日発売)
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本棚登録 : 391
感想 : 52

酒井順子のエッセイに引用されていた「なんとなく、クリスタル」および「33年後のなんとなく、クリスタル」に興味を持った。「なんとなく、クリスタル」は発表当時読んだ。しかし2014年に発表された「33年後の・・・」は未読だったので、今回読んでみた。
前作は当時の都会に生きるの軽く、主義主張を強く出さず、世の流れに流されていく若者たちを描いている。またその注釈の多さで話題になったと記憶していた。今回の「33年後の・・・」も注釈の多さは相変わらずだ。
本作は前作に登場したメンバーのその後を描き、彼らがどのような人生を歩んできたかを単に描いただけではない。80年代から現代2014年辺りまでの日本の変動、変容の中で日本人はどのように生きてきたかを描いたといえる。
前作では想像もしなかった世界動向や社会的変化と日本での複数の大きな自然災害、あの当時の登場人物たちはそのような未来が待ち受けているとは思いもよらなかっただろう。しかし、前作最後に著者は当時の『人口問題審議会「出生動向に関する特別委員会報告」』等を掲載し、日本の出生率低下と今後の高齢化社会を暗に示唆していた。今回の作品の最後にも同様に出生率の低下、高齢化率等の統計を掲載している。将に著者は33年前に現代日本の問題点を指摘していたといえる。
今回「33年後の・・・」を読んで、前作を読んだ当時は私も若く(著者と同世代)作品の上面だけを読んでいたのだと感じた。両作品に共通するものは著者の斜に構えた社会の見方、共感と批判だろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年6月25日
読了日 : 2016年6月25日
本棚登録日 : 2016年6月25日

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