文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

  • 草思社 (2005年12月21日発売)
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感想 : 92
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「銃・病原菌・鉄」に続いて読了。読み始める前は、例えば「ローマ帝国の滅亡」のようなスケールの実例の考察かと勝手に想像していたが、本書で対象とされるのは現代のアメリカモンタナ州、西洋文明到達前のイースター島、1000年前のポリネシアの島々やネイティブアメリカン、マヤ文明、北大西洋のヴァイキング植民地等もっと限定された社会の盛衰の歴史だ。
みずからの環境破壊、気候の変動、他社会との敵対関係/友好的な交易関係、文化的な姿勢の5つが滅亡に至る要因としてそれぞれの文明を分析、考察している。年代も規模も文化水準も様々だが、それぞれが現代のグローバル世界の縮図として描かれる。人口増加により期せずして脆弱な自然環境を破壊し滅亡にまで至ってしまう過酷さは、温暖湿潤、自然の恵み豊かな日本に住む我々の想像を超えているが、誰にも知られずにひっそりと滅亡していった文明の数々を現代に甦らせるロマンがある。
そして、西洋化された価値観では測れない精神世界が確かに存在していたという事実。例えば、第三世界の多くで人肉食が存在していたそうだが、食べるという行為は文明化されていない土着の世界では娯楽や嗜好ではなくもっと神聖なものだったはずで非文化的とか野蛮だとか断罪してしまうのはやはり違和感がある。
学者ならではの専門性、緻密さ、想像力で大変読み応えがある名著。相変わらず同じ記述が何度も出てきて冗長になるのはご愛敬。
下巻に続く。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 世界歴史文化
感想投稿日 : 2023年11月23日
読了日 : 2023年11月23日
本棚登録日 : 2023年1月19日

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