華宴 (幻冬舎アウトロー文庫 O 39-1)

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  • 幻冬舎 (1999年12月1日発売)
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雛壇の前で
子どもの頃の僕はいつも
どこか居心地の悪さを感じていた。

お嫁にいらした姉様に
よく似た官女の白い顔

お嫁はおひな様ではないのか。

お内裏様を見上げて
子どもの僕は思った。

お嫁はおひな様ではないのか。
それとも。

お内裏様とおひな様
二人ならんですまし顔

知っているのか。
おひな様は知っているのだろうか。

お内裏様もおひな様も
二人とも知っていながら
すまして三人官女を見下ろしているのか。

三人官女は
うなじに二人の視線を感じているのだ。

少なくとも
右大臣と左大臣は知っているのだろう。
否、右大臣は怪しい。
酒に酔った老人だ。
善きにあしらわれているやもしれぬ。
しかし、左大臣はそうはいくまい。
精悍な顔つきをしているが
心得ているだろう。

それにしても
能天気なのは五人囃子だ。

子どもの頃の僕は
官女の白い顔に
見入っている。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 修行
感想投稿日 : 2012年3月4日
本棚登録日 : 2012年3月4日

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