江戸末期から始まる日本の近代建築史の後半。明治末から第二次世界大戦までの期間を扱っている。
上巻では日本に西欧の建築がどのように入ってきたかということが主眼であったのに対して、下巻は、日本で教育を受けた建築家が実作をつくり、西欧の建築の潮流とほぼ時期を同じくしながら発展している様子が描かれている点が大きく異なる。
その背景には、日本の近代建築教育制度が離陸し、建築家がプロフェッションとしてもある程度確立し始めたからという理由もあるであろうが、それだけでなく、建築自体が歴史主義や気候風土といったもの以外に、機能、経済、幾何学的構成の美学といったものによって計画される近代建築の特徴も寄与したのではないかと感じた。
こういった必ずしも地理的、歴史的要因に紐づけられない要素を背景にする建築が登場した時に、日本の建築家も努力すれば西欧の最先端と同じ土俵で競うことができる環境が整ったということなのではないかと思う。
また、建物をつくるということだけでなく、日本の都市計画や建築法規、さらには住宅供給制度などの起原を作った「社会政策派」の登場に触れられている点も興味深かった。
技術と法と政策を武器に、地震、火事、住宅、都市の四つのテーマに取り組んだ一連の専門家(「建築家」という言葉のニュアンスとは違った職能と思われる)の活躍が詳しく書かれており勉強になった。
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- 感想投稿日 : 2017年10月25日
- 読了日 : 2017年10月24日
- 本棚登録日 : 2017年10月15日
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