端的に言えば、写真から情緒や自我を排除して、冷徹にあるがままを淡白に写せばよい、という方向性を表明している。図鑑の写真のように「悲しそうな」とか「華やかな」などの感情や作者性などを持ち込むのをやめたいという欲求。とは言え、自身の周辺や経験、現代思想からの影響、自分語りなどの紆余曲折も絡めたエッセイであり、写真論にまで昇華されていない印象がある。つまりこの本そのものが、中平卓馬自身のエゴの表出に留まってしまっている。口上は無用、無言でシャッターを押せ、と言いながらも長い長い説明をせずにはいられない。しかしその数年後、皮肉にも思わぬ形でその思いは成就されたのかもしれない。特異な一生だったのだ。
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- 感想投稿日 : 2020年4月18日
- 読了日 : 2020年4月18日
- 本棚登録日 : 2020年4月18日
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