廃用身

著者 :
  • 幻冬舎 (2003年5月1日発売)
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本棚登録 : 386
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高齢者の麻痺側の手足を切断する療法を編み出した医師の告白。
デビュー作品。

まえがき
第一章 玄関にガス燈のあるクリニック
 「こんな足、切り落としてくれ」
 帰国したのに就職口がない
 『異人坂クリニック』誕生
第二章 新しい老人医療を目指して
 当てにならない痴呆判定テスト
 「もう年だから」と言わないで
 老化防止の”かきくけこ”
 「新」老人安心医療
第三章 隠された老人虐待
 老人の「死にたい」願望
 ありふれた老人虐待
 想像を絶する虐待の実態
 「虚弱老人」の恐怖
 ある特異な虐待の一例
第四章 なぜ切断してはいけないのか
 苛酷な老人介護の実態
 シドニーパラリンピックでひらめいた”禁断の新療法”
 親からもらった大事な身体
 「廃用身」という苦痛からの解放
 何が切断を阻むのか
第五章 第一例目の決断
 状況の悪化
 みんなの意見
 バリアフリーの豪邸
 「モグリ診療」での切断
 思いがけない申し出
第六章 九十歳の切断決意
 カミングアウト「後悔はしていないんです」
 デイケア参加者の反応
 「わたしも、アレ、やってもらえませんかね」
 切断ではなく「Aケア」
第七章 「Aケアカンファ」発足
 脚なしで歩く衝撃のパフォーマンス
 「緊急Aケア」-すべきかせざるべきか
 病状が悪化して楽になる老人介護
 「Aケア適応基準」と「Aケアカンファ」
 明るい候補者選び
第八章 これは奇跡か
 一年目の実績
 廃用身除去すること以上の効果
 「Aケア」チームvs「廃用身」チーム
 きくゑさんが日付を言った
 『五体未完成』のメカニズム
第九章 「Aケア」の未来
 勇気ある先駆者たち
 医療は科学ではなくサービス業
 身体のリストラ、グラン整形?-「Aケア」を広めるために
 「究極のAケア」
 超高齢社会の新しい処方せん
★編集部註-封印された「Aケア」とは何だったのか 矢倉俊太郎

デイサービスを併設した異人坂クリニックで院長を務める漆原糾が、利用者のQOL向上のために考え出した療法は、麻痺した手足を切断する「Aケア」だった。

不思議なことにAケアを行った患者たちは、苦痛から解放されたり、自立したり、認知症が改善したりと良いことづくめだったが、マスコミに「Aケア」のことが暴露され、社会的問題に。

閉塞感に満ちた高齢者医療について鋭く切り込む。


フィクションでありながら、老人医療にまともに向き合ってこなかった日本の現状に鋭くメスを入れます。

医師ならではの作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 久坂部羊
感想投稿日 : 2018年11月18日
読了日 : 2015年4月28日
本棚登録日 : 2018年11月18日

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