天才スピヴェット [DVD]

監督 : ジャン=ピエール・ジュネ 
出演 : ヘレナ・ボナム=カーター  ジュディ・デイヴィス  カラム・キース・レ二―  カイル・キャトレット  ニーアム・ウィルソン  ドミニク・ピノン 
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感想 : 22
4

「デリカテッセン」「アメリ」「ミックマック」のジャン=ピエール・ジュネ監督のロードムーヴィーで、弟を無くした変人一家の再生物語です。

主人公であるT・Sは科学の天才なのですが、彼は人と違うこと、マイノリティーであることに劣等感を感じていて、凡人の自分でも十分共感できる葛藤が設定されています。
「俺って天才で周りはバカばっかじゃん?だから苦労するわけ」みたいないけ好かない話じゃなく十分感情移入できる作りでとても良かったです。

そして何よりT・Sの天才性を示す論理的思考を独特のセンスで表現されていてとても楽しい!
例えば自分の歩幅から速さを計算して自分が駅に間に合わないこと導き出すとか、普通の人が無意識に脳みその中で考えていることを細分化して豊かに描写しているんです。
天才特有の思考というよりは普通の人が無意識で処理してしまうことを魅力的に表現しているので、ユニークでわかりやすくて面白い!ジュネ監督の作品の中でも万人向けの作品だと思います。

あまりクセがない映画ですが独特のシニカルさは健在で、監督の考えるアメリカというものを皮肉っているのも良かったですね。
都会の話題性ビジネスや賞レースの醜悪さももちろんなのですが、田舎のカウボーイのイデオロギーへの相対化も入っているところが抜け目ないというか。
弟のレイトンは不可避の事故で死んだわけではなく、要は父親の監督不行き届きで亡くなったわけですよ。子供だけで銃で遊ばせるとか、どう考えても間違っているわけで。
悲劇をたくさん生んでしまうアメリカ文化の「おかしさ」を起点として、今作のような人情話を作り出すってのはなかなかアイロニカルだなと思いました。

悲劇がたくさんあるから物語がたくさん生まれる、アメリカという国を羨んでいるようでいて憎んでもいる。ジュネ監督らしさがさりげなく入った奥深い作品です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 洋画
感想投稿日 : 2016年8月9日
読了日 : 2016年8月9日
本棚登録日 : 2016年8月9日

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