外交敗戦―130億ドルは砂に消えた (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2006年6月30日発売)
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5

「ニューヨーク・タイムス」だったか「ワシントン・ポスト」
だったか。湾岸戦争の際のコラムで「日本は金だけ出して血を
流さない」との反日コラムが掲載され、アメリカ国内に日本
バッシングの風潮が高まった。

このコラムに反論したのは政府でも官僚でもなく、日本の高校生
だった。憲法第9条を独学で英訳し、日本が何故多国籍軍に参加
出来ないかを縷々説いた手紙を新聞社に送った。本書を読みながら、
そんな話を思い
出した。

アメリカからの派兵要請があった時点で、本来であれば政府なり
事務方なりが徹底してこのような説明をすべきなのだろうが、
そこをおざなりにしての財政貢献を急いだのではないだろうか。

その日本から数度に渡って金を引き出したアメリカであるが、
その言動はまるでいなおり強盗のようである。第1次・第2次の
財政貢献は円建てであり、多国籍軍に参加した国に分配された。
これが第3次の財政貢献となると、日本からの拠出金を独り占め
しようとし、円建てでの目減り分を補填させようと画策する。

自国の国庫も省みず1発約1億8千万円のトマホークを大量に使用し、
その損失分を同盟国の国民の血税で満たそうとしたのだものなぁ。

そして、そんなユスリ・タカリ国家アメリカの言いなりに金を出した
日本は、大蔵省vs外務省の面子にこだわった内なる戦いで完全なる
外交の敗北を喫している。

個々の官僚・外交官はそれぞれに持てる力を発揮して危機に対応して
いるのだが、組織となると縦割り行政の弊害が外交にも影を落とす。
アメリカはそこに付け込み、自国内での反日感情キャンペーンを
展開して日本政府に揺さぶりを掛けて行く。

アメリカ・日本のどちらにも偏らず、客観的視点で書かれた良書で
ある。私たち日本国民の多額の血税が使われたにも関わらず、
アメリカと言う駄々っ子に振り回されて不本意な評価しか得られな
かった。

だが、アメリカ政府は思い出せ。クウェート侵攻が始まった時、
自分も命の危機に直面しながらアメリカ大使を日本大使館に
匿った外交官がいたことを。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・政治家
感想投稿日 : 2010年5月7日
読了日 : 2010年5月7日
本棚登録日 : 2010年5月7日

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