記者は何を見たのか - 3.11東日本大震災 (中公文庫 よ 45-3)

  • 中央公論新社 (2014年2月22日発売)
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東日本大震災での死者・行方不明者は18,517人(2014年3月
10日時点)になる。数字として書いてしまうとただの人数に過ぎ
ないが、18,517人それぞれにその人の人生があった。

未曽有の大災害に襲われた被災地の人々とその土地の様子は、
海千山千の新聞記者たちさえもたじろがせた。

各メディアが大震災発生直後から多くの人員を被災地に派遣した。
本書は被災地の総局や支局は勿論、東京本社はもとより日本各地
の支社・支局から被災地に投入された読売新聞記者77人による
取材手記である。

「伝えなければならない」。読売新聞だけではなく、多くの記者が
そんな思いで被災地を走り回り、何もかも失くして呆然とする
被災者に話を聞いたのだろう。時には、一緒に涙を流しながら。

新聞紙面には掲載されなかった話も多くあるだろう。そんな
出来事をこういう形でまとめることもいいのかもしれない。

だが、釈然としないものが残るのも確かだ。読売新聞は原発
推進の提灯を持ったことに触れないのか?福島第一原発事故
後に大手メディアが真っ先に福島から退避したことには口を
噤むのか?

地元紙である河北新報は、避難区域からの自社記者の退避
を正直に綴っていたぞ。

原発は安全です。原発は安心です。原発はクリーンです。原発
は安価です。日本のエネルギー政策になくてはならないもの
です。核の平和利用なのだから、日本に原発を作りましょう。

そう言って来た自社の反省はなく、東電と政府だけを批判して
いいのか。先の東京都知事選の際も、脱原発を掲げた元
首相コンビを批判していたじゃないか。

記者ひとりひとりは、真摯に被災者と向き合い、話を聞き、
心を寄せたのだろうけどね。

あ…それと新聞記者なら「阪神・淡路大震災」って書いて
欲しかったなぁ。揃いも揃って「阪神大震災」って書いている
のはいただけませんね。

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感想投稿日 : 2017年8月19日
読了日 : 2014年3月13日
本棚登録日 : 2017年8月19日

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