「昭和天皇実録」の謎を解く (文春新書 1009)

  • 文藝春秋 (2015年3月20日発売)
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感想 : 35
5

掛けた歳月24年5カ月、総ページ数12,000ページ。87年に渡った昭和
天皇 の生涯を綴った『昭和天皇実録』の編纂が終了し、今上陛下に
奉呈された のが2014年9月。

そして、今年3月から一般刊行が始まった。早々に予約をしたのは
いいが、 全19巻を5年かけて刊行することを予約語に知って愕然とした。
それまで 何があっても生きていなくちゃ。

既に刊行された2巻は手元にあるのだが、未だ手を付けていない。
読もうと思った矢先に、本書が出版されたからだ。昭和天皇の
崩御後、関連の書籍が多く世に出たので時間のある限り読んだ
のだが、それでも知らないことが多い。

なので、『昭和天皇実録』に取り掛かる前段階の予習として本書は
最適なのではないだろうか。昭和史に詳しい4人それぞれが、持論を
展開しながらも『昭和天皇実録』の主要と思われる部分を読み解いて
いる。

本書のメインとなっているのが戦前から終戦までだったので、『重臣たち
の昭和史 上・下』を読んでおいてよかった。これが予備知識として
役に立った。

幼少時の話も興味深かったのだが、今まで昭和天皇の関する作品を
読んでいて何故、軍部の暴走をみすみすお許しになったのか疑問に
感じてたんだよな。

だが、半藤氏の以下の発言ですとんと自分の中で何かが繋がった。

「実は私は、昭和天皇には三つの顔がある、と考えているんです。
ひとつは「立憲君主」としての天皇、もうひとつは陸海軍を統帥する
「大元帥」。そして両者の上位にさらに、皇祖皇宗に連なる大祭司で
あり神の裔である「大天皇」がおわす、というのが私の仮説です。」

ふたつの異なる立場の間で、板挟みになっている昭和天皇像が
克明に浮かび上がるではないか。

もうひとつの発見は、これまで内容が明らかにされていなかった
「拝聴録」である。折々に昭和天皇が侍従を相手にご自分の胸の
うちを語られた聞き書きである。

やっぱりあったんだな。だた、どこにあるのかがはっきりされていない。
今上陛下のお手元にあるのではないか…とも言われるが。

この「拝聴録」がいつか一般に公開されたら、昭和史が今以上に
興味深くなるかもしれない。

本書の4人の語り手の解読を参考に、そろそろ『昭和天皇実録』に
取り掛かろうかな。でも、その前に昭和史を今一度復習しておいた
方がいいかも。

『昭和天皇実録』本体を読み通すのは無理…と言う人でも、昭和史に
興味がある人にはダイジェストとしていいかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月21日
読了日 : 2015年6月11日
本棚登録日 : 2017年8月21日

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