百年の孤独: Obras de Garci´a Ma´rquez1967 (Obra de Garc´ia M´arquez)
- 新潮社 (2006年12月20日発売)
太陽の熱と砂にまみれたマコンド村のブエンディア一族は、その頭首のホセ・アルカディオがジプシーのメルキアデスに傾倒したことで、奇妙な系譜を紡ぐことになる。アウレリャノ・ブエンディア大佐は戦争の英雄となり、小町娘のレメディオスは妖精となって窓辺から消えて、叔母と甥の近親姦で生まれた豚のしっぽのアウレリャノは餓死の末に蟻に運ばれる…
無茶苦茶な文脈で、非現実的な世界観なのだけど、一族の人々がやけに魅力的で一気に読めてしまう。特に、100歳超えて目が見えなくなっても一家を仕切るパワフルなウルスラおばあちゃんが好き。アマランタのツンデレとはもはや言えない天邪鬼っぷりにあきれたり、一族の子を何度も生むピラル・テルネラの放埓な優しさに驚いたりするうちに百年がたって、最後は嵐の中で一族の形跡がすべて消えてしまう。
アウレリャノ・ブエンディア大佐やアウレリャノ・バビロニア(ひきこもり)が一生懸命解読しようとしてたのが自分の一族の顛末記というのが、ちょっと笑っちゃうオチ。
人間の営みが最後に跡形もなくなって消えてしまうのは、諸行無常やもののあわれに通じるところがある。また超常的な町の出来事は、人と自然の境目が曖昧なアニミズムっぽく、すこし日本の文化に似てて共感。
物語の終わりにマコンドの村は消え去るけど、読者には、眠れなくなる奇病、金の魚細工、自動演奏のオルガン、レメディオスの肖像……等々、ブエンディア一族の姿が強烈に残る。彼らはみんな変人で、主観的には孤独だったかもしれないけど実はお互いに愛し愛されていたと思うし、同じ名前の繰り返しに何度も家系図を見返しながらそれにつきあった読者も、まあ彼らを愛さずにはいられない。だから、百年の「孤独」というには騒がしく、どうにも愛に溢れた小説に感じた。とはいえ、愛と孤独は表裏一体だから、結局同じことかも。
- 感想投稿日 : 2023年2月14日
- 本棚登録日 : 2023年2月14日
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