デモクラシーの帝国: アメリカ・戦争・現代世界 (岩波新書 新赤版 802)

著者 :
  • 岩波書店 (2002年9月20日発売)
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感想 : 27

主権国家の構成する国際関係がその国際関係という枠を保ったまま安定を保つことは大国にとっても決して不利なことではない。また単独行動に訴えることだけが大国にとって有利な選択であるともいえない。だとすれば、力の優位があるからといって、大国がその優位を利用し、帝国としての政策をとるように変わってしまうとは限らないのである。大国による帝国への転化は決して必然ではない。
国際関係を帝国状況から変えてゆくためには、やはりアメリカが対外政策を転換することが必要になる。

アメリカは海外領土を求めていない。帝国が軍事力によって領土拡大を図るものだとすれば、アメリカはそのような帝国とは考えられない。アメリカ人も帝国と呼ぶことは悪意か中傷と思っている。

国際政治における権力の主体とは何よりも個別の政府であり、その政府が国民を代表しているという擬制に頼っている。

通常の国際関係では各国がお互いに抑止しあう関係が成立するのに対し、帝国秩序では帝国による抑止はあっても帝国が抑止されることはない。戦争の脅威によってお互いに脅しあう国際関係と異なって、帝国だけが軍事的恫喝を行うことができる。

デモクラシーとは各国の国内政治を構成する原則や制度であり国際関係とは関係がない。国際関係とは権力闘争である以上、理念の表明などは本当の目的を美化するためのきれいごとにすぎない。

軍事的に覇権を維持しつつ、人権や民主主義を外交実務で表明するのはアメリカ外交の特徴。

核抑止戦略を核保有国が採用する状況においては最も大きな被害が予想される戦争ほど抑止戦略が働きやすいという逆説が生まれる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国際関係
感想投稿日 : 2012年1月28日
読了日 : 2012年1月28日
本棚登録日 : 2012年1月28日

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