自民党―「一強」の実像 (中公新書)

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  • 中央公論新社 (2017年4月19日発売)
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 日々の報道から漠然と感じていたことが頭の中で大いに整理・確認された。中選挙区制廃止と資金力減少に伴う派閥の弱体化。自公の選挙協力の深化。友好団体や個人後援会の衰退。一方で自民党自体の地方組織は強固ではありつつ、弱体化と強化の動きが両方あるようである。
 一方、一部に流布するイメージが必ずしも実態に即していないことも確認できた。筆者は無党派層の票が重要になっているとはしつつも、実は、05年の郵政選挙を例外とし、12・14年総選挙での自民党勝利は非自民勢力の分裂に加え低い投票率、すなわち無党派層動員よりも固定票の確保のためだという(その帰結か、筆者は無党派層にアピールする側と世襲など固定票を有する側に国会議員が二重構造化していると指摘する)。また、宗教団体の集票力が減退している以上、日本会議の影響力増大が自民党を右傾化させているとの指摘は正しくないと述べている。
 終章で、総理・総裁としての小泉氏と安倍氏を比較しているのも興味深かった。小泉氏は無党派層を重視し党内に敵を作ったが、安倍氏は支持基盤を重視し党とも融和的、新自由主義的改革も限定的とのことである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2017年12月27日
読了日 : 2017年12月27日
本棚登録日 : 2017年12月27日

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