「本をつくる」という仕事 (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房 (2017年1月25日発売)
3.66
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本棚登録 : 703
感想 : 55
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一冊の本は「文字体」、「装丁」、「紙質」、「校閲」、「海外との販売代行」など様々な分野で様々な人が魂を掛けた芸術作品である。

「文字体」はより読者の心を摑む文字にする為に数万文字を一文字ずつデザインし、指摘を受けつつも全てこなす。担当した人は文字の更新に7年の歳月を要したと言っていた。しかしまた充実した7年間であったとも言っている。今打っているこの文字も一文字一文字デザインしてくれた人達がいてこそである。さらに昔は手彫りで掘っていた時代もあり驚きである。
「紙質」は昔酸性紙が主であった為長期保存が効かずボロボロになるものが多かった。長期保存する為に中性紙を使用しなければならないがコスト、時間が掛かり大変であった。また、「紙」は縦繊維と横繊維があり、ページをめくり易いのは縦繊維である。そうした読者への気配り、技術の進歩にも魂を賭けていた。
「校閲」は菅田将暉、石原さとみ主演のドラマ「地味にすごい」で校閲部門の人々の仕事ぶりを描いていたが、校閲の人達は本当に命がけだと思った。校閲は原作者の作品を最初に見て誤字脱字、矛盾がないか添削するいわゆる赤ペン先生である。しかし、見落とし等の抜けがあり、間違ったまま出版すれば最悪絶版の危険性もある。地味な部署だが本当にすごい部署だと思った。
「装丁」は本の表紙等のデザインで、本の顔だと思う。装丁する本を一読し、また取材をし、その本の魅力を最大限に引き出すデザインをする。技術、感性のスペシャリストと思った。
「海外との販売代行」は「タトル・モリ」という会社が海外に出向き、日本人にウケそうな洋書を翻訳し、出版し、また日本作品を世界に輩出している。洋書で代表的なものは「フォレスト・ガンプ」「氷の微笑」「シックス・センス」等。こうした人達が居なければ海外の良い作品を見れず、また日本アニメのように日本の良さをアピール出来ない。

本は時代の現れでもあり芸術である。江戸時代の本棚、中世ヨーロッパの本棚、そして現代の本棚、それぞれの時代にそれぞれの技法で作られており、感じるものもまた違う。
普段何気なく手に取る一冊の本、その本が本棚に並ぶことは多くの人達の歴史、努力の積み重ねであり、素晴らしい事である。「君達ほどう生きるか」の本を読んだ時に自分1人の存在は周りと切っても切り離せない存在だとあった。食べ物、着るもの、全てにおいて作る人、そして着る、食べる自分がいること、本についても同じで繋がっている。今回は本の制作過程を見たが、一冊の本の見方が変わり、より大切にしようと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年12月7日
読了日 : 2019年12月7日
本棚登録日 : 2019年12月7日

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