家郷の訓 (岩波文庫 青 164-2)

著者 :
  • 岩波書店 (1984年7月16日発売)
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感想 : 21
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宮本常一さんの故郷である周防大島の生活、
特に躾について綴られた本である。

宮本さんが村里生活内における躾について述べるきっかけとなったのは、
彼が大阪へ出、小学校の訓導となった際、教育の成果を十分に
あげていないと感じたことからであった。
その原因として、その村における生活習慣や家庭の事情に
暗いことに思い至る。その村の性格や家風、家や村の生活が、
子どもたちの個性に反映されていると考えた。
つまり、郷党の希求するところや躾の状況が本当に分からないと、
学教の教育と家郷の躾の間に食い違いを生じ、それが教育効果を著しく
削いでいる、と知ったのである。

これは宮本さんが民俗学という学問を、学びはじめた動機である。
必要性にかられ、歩み始めた道だった。

面白かった点
・P41「外祖父は講談のすきな人で祖父が素朴な昔話をしてくれたのに対して、小栗判官だの宮本武蔵だの岩見重太郎だのを話してくれ、しかもこれを史実として考えていた。」
一人の昔の人の歴史に対する考え方を知ることができておもしろい。

・北条氏政の味噌汁二度がけの話が毛利輝元の話として、
言い聞かされたと体験談が載っている。

・P94「御船手組奉行の村上氏などはその主婦をオウラカタとよばれていた。」
村上氏というと村上水軍の村上氏と関係があるのか?

・「私のふるさと」と題され、宮本さんの生まれ育った家のまわりについて
まとめられた章が具体的で素朴で面白かった。
お宮の森に「宮ホーホー」という化物がいると祖父に聞き、
それを夢に見たという話がユーモラスで興味をそそった。
P215「道の南側に古びた倉があった。瓦に一に三つの星の紋がついていた。これは藩主毛利公の紋であった。きくところによるとこの倉はもと藩の倉庫で、藩政のころ年貢米を入れたものであった。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本と文化
感想投稿日 : 2013年7月10日
読了日 : 2013年7月10日
本棚登録日 : 2013年7月10日

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