未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2018年5月16日発売)
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ベストセラーとなった『未来の年表』を書いた著者が再び人口問題について書いた本。今回は年表というよりも具体的に将来何が起きるのかをシミュレートしたという。というのも、前著を読んだ読者から、これから何が起きるのかを示す「人口減少カレンダー」に対して、では具体的に個々人の日常の中で何が起きるのか、そしてそのときに何をすればよいのかを教えてほしいというリクエストが多くあったからだ。

いわく、
・伴侶に先立たれると、自宅が凶器と化す (多くの事故が道路などでなく、自宅で起きている)
・亡くなる人が増えると、スズメバチに襲われる (所有者不明土地が増えて管理されなくなる)
・東京や大阪の繁華街に「幽霊屋敷」が出現する (空き家率でなく空家数では大都市圏での数が多い)
・高級タワマンが「天空の老人ホーム」に変わる
といった話が書かれている。

著者自身、二匹目のどじょうでもなく、二番煎じでもない、というが、大事な話なのでもう一度言います、ということなのて、二匹目でも二番煎じでもそれはそれでいいのではないかと思う。本当に大事なことには違いはないのだから。日本の高齢化社会の特徴として、①高齢者の「高齢化」、②一人暮らしの高齢者、③女性高齢者、④低年金・無年金の貧しい高齢者、が挙げられる。これらの影響を切に考える必要がある。

本書の構成は、まず前半で「あなたの身に起きること」として、住まいで、家族に、仕事で、暮らしに、女性に、というテーマで将来に起きるであろう想定事例を挙げる。続く後半では、「あなたができること」として、個人ができること、女性ができること、企業ができること、地域ができること、をテーマとして提案を挙げる、という構成になっている。言わんとすることは、生産年齢人口が減って、高齢者が多くなっても充分に社会を維持できるような仕組みとマインドを作っていかないといけないということになるだろう。

「あなたができること」としては、次の8つが挙げられる。「戦略的に縮む」ことが必要だという。
① 働けるうちは働く
② 1人で2つ以上の仕事をこなす
③ 家の中をコンパクト化する
④ ライフプランを描く
⑤ 年金受給開始年齢を繰り下げ、起業する
⑥ 全国転勤をなくす
⑦ テレワークを拡大する
⑧ 商店街は時おり開く

ちなみに、前著『未来の年表』での提言は次の通り。今回の提案は少し身近なものになっているだろうか。個人的には前回提言されたものに関して、社会・政府がどのように進もうとしているのかが大事であると思っている。基本的には著者の考え方に賛成で、乗り越えるべき課題もおおむねその通りだと思っているので、政府の対策は気になるところである。実際、公務員の定年引上げなどに動いているので、一定の流れはあるのだろうとは思う。
①「高齢者」の削減 (高齢者を定義する年齢の変更)
② 24時間社会からの脱却 (利便性の放棄)
③ 非居住エリアを明確化 (コンパクトシティ推進)
④ 都道府県を飛び地合併
⑤ 国際分業の徹底
⑥ 「巧の技」を活用
⑦ 国費学生制度で人材育成
⑧ 中高年の地方移住推進 (脱・東京一極)
⑨ セカンド市民制度を創設
⑩ 第三子以降に1000万円給付

メッセージは、社会全体がゆでガエルにならないように、ということと、新しいビジネスモデルや公共政策を考えないと、というもの。自動運転車技術も高齢化社会にとても適合しているように思うし、通信技術も寄与貢献することはできるだろう。

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『未来の年表』河合雅司
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4062884313

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2018年8月12日
読了日 : 2018年7月12日
本棚登録日 : 2018年7月14日

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