人体600万年史(下):科学が明かす進化・健康・疾病

  • 早川書房 (2015年9月18日発売)
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上下巻からなるこの本、下巻は「ミスマッチ病」についての記述が続く。
原因を克服することなく症状に対処することは、その弊害が自然選択のふるいにさらされることがなく次世代に引き継がれるため、著者が「ディスエボルーション」と呼ぶ有害なフィードバックループを生む。その進化と環境のミスマッチの結果が「ミスマッチ病」と呼ぶ一群の疾患ということになる。ミスマッチ病について理解することは重要だ。なぜなら、われわれは「十中八九ミスマッチ病で死ぬ」のである。本書では、心臓病やがんだけでなく、自閉症やADHD(多動性障害)、骨粗鬆症、アレルギー疾患、埋伏歯、アルツハイマー病もミスマッチ病に分類される。

まずは農業の導入がミスマッチ病の大きな原因のひとつとなったとされる。「農業経済に移行した当初、人々はその切り替えからなにがしかの恩恵を受けたが、以降、この新しい生活様式は多くのミスマッチ病や、その他さまざまな問題を生み出した」とされる。もちろん、農業社会に移行した方が繁殖という観点では都合がよかったからに他ならないのだが、人類が進化的に適応するには時間が短かった。

さらに輪をかけて問題となるのが産業革命だ。生活の工業化と都市化。産業革命は、進化的な時間尺度でいうと、「瞬きするあいだに全世界の様相を変えてしまった」ために、多くのミスマッチ病が発生することとなった。実際に当初多くの人を惹きつけた都市での生活における人々の死亡率は田舎よりも高かったと言われている。
食事についても工業製品化された食品は十分なカロリーを供給することにはたけているが、過剰摂取やビタミン・ミネラル・繊維質の不足が目立つようになる。さらに慢性的な睡眠不足が肥満を輪をかけて促進する。2型糖尿病はディスエボリューションの典型的な例だ。

「進化の光を当てなければ生物学には何の意味もない」

一方、人類は文化を通じても進化できるようになった。「文化的な革新がこうしたミスマッチ病の多くを引き起こしてきたように、別の文化的革新がこれらを予防するのに役立ってくれる。それを実行するには科学と教育と、賢明な集合的行動のすべてが必要となる」

それにしても無理に長かったなという印象。


『人体600万年史(上):科学が明かす進化・健康・疾病』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152095652

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2015年11月24日
読了日 : 2015年11月13日
本棚登録日 : 2015年11月10日

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