「欲求階層説」、「自己実現」、「心理学第三勢力」などで有名なマズローさんですが、今まで読んだことなし。書評などで好意的に取り上げられているので読んでみました。"Maslaw On Management"をこう訳すのは無理があるが、主著『完全なる人間』にちなんだのでしょう。その原題も"The Psychology of Being"。無理があるのでは?
正直に言うと、かなり違和感があります。神経症や発展途上国に対するかなり差別的な認識や、生まれながらの優劣の積極的肯定。文中でも何度も、昔の話でありそのため現代の認識とは違う、という訳者注が言い訳のように挿入されていますが、かなり根本的な問題であるように思うのは私だけでしょうか。少なくともそこの部分での違和感が私の素直な理解を妨げている気もします。例えば、
「ごく近いうちに、心電計や脳波計などを用いた信憑性の高い一連の実験が可能となり、被験者が将来いい管理者や監督者、上司、リーダーになれるかどうかを、かなりの確率で予測することができるようになるだろう」
...
またどうも言葉の使われ方に無頓着さを感じてしまいます。これは翻訳のせいなのでしょうか、自分の不勉強のせいなのでしょうか。選択された語が時代および学界を背景とした中で何らかの特別な意味と位置があったのではないのかとも思いますが、それを感じることは自分はできませんでした。例えば"いい人間"や"いい社会"という言葉が留保なく使われていて、どうもなじめません。"いい経営"というものを議論するためには、全体論的な議論が必要だということで、そのためにはこういう記述しかなかったというものなのかもしれないです...いいこと言っていることは、言っているのですが。
あと、途中に頻繁に挿入されるインタビュー。リズムが崩れて邪魔なのです。私だけ?
きびしめですが、星2つ。いい本なのかとは思いますが、合わなかったということで。
- 感想投稿日 : 2009年12月26日
- 読了日 : 2006年12月24日
- 本棚登録日 : 2006年12月24日
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