ベッタリと雲に覆われた空、そこから降り注ぐ青い光。
世界は凍りついていく。気紛れに、けれど確実に。
この物語に登場する主な人達は、優しい人だ。つましく、奢らず、謙虚で、親切で、互いを認め合う。世界が終わりを迎え始める前から、みんな優しかった。そして、優しくない世界に「優しくないね」と言っていた。
世界が終わりを迎えると知って、主人公のテレビの向こうにいたあの大人達はどうしたのだろうと読み終わって思った。欲のために誰かを利用することも罵ることもやめて、愛する誰かのもとへ駆け出したのだろうか。せっせと溜め込んだお金も、地位も名誉も捨てて、満ち足りた気持ちで終わりを迎えられたのだろうか。いつか交わした約束は、果たされたのだろうか。
そうだったらいい。怯えながら迎える終わりなんて、そんなの悲しいし、優しくない。
ひとまずは、私にも訪れるかもしれない世界の終わりに備えて、優しい欠片を集めたい。きっとそこらじゅうにあるはずなのだ。家族も、友人も、優しい人たちだから、きっとたくさん散りばめているはず。優しい欠片をありがとうを言いながら拾い集めたら、私も少しは優しくなれるだろうか。世界の終わりに、会いたいと思ってもらえるような誰かに。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2018年5月5日
- 読了日 : 2018年5月5日
- 本棚登録日 : 2016年10月27日
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