前半はかなりおもしろい。印刷技術の黎明期の姿が興味深かった。活版印刷は当時の最先端の技術だったけれど、それに従事しているのは素朴なカトリック教徒、というのが、当たり前だけれどおもしろい前提。考えてみればグーテンベルクが印刷したのは聖書だし。
天使のようにも悪魔のようにも見える超能力者44号のカリスマには魅力を感じる。こいつは人間ではないな…というか、根本的に話が通じない感じが実に気持ち悪くて恐ろしくて、おもしろい。
おそらく完成稿ではないということもあって、散漫なところがあるのがやはり残念。後半の妙なラヴロマンスなんて、前半にそんな気配がないものだから唐突に感じるし。ただ、印刷機はすなわち複製機で、だから語り手のアウグストたち印刷工の複製が立ち現れるのだという訳者の解説はなるほどと思った。
訳は微妙。正確なんだろうけどいまいち日本語としてこなれていない訳文で、傍点が煩わしい。お金が日本円になっているのも気になる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説(海外)
- 感想投稿日 : 2010年10月24日
- 読了日 : 2010年10月8日
- 本棚登録日 : 2010年9月22日
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