二都物語 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2014年5月28日発売)
4.04
  • (45)
  • (43)
  • (21)
  • (5)
  • (3)
本棚登録 : 769
感想 : 53
5

http://dokushokai.shimohara.net/meddost/dickens.html

ディケンズ-ドストエフスキー-フラナリーオコナー
キリスト教を信じる人々と、神の沈黙。

読み終えました…すごくおもしろかった。ディケンズが今までどれだけの小説家に影響を与えてきたのか、どれだけの人々におもしろく読まれてきたのか、もう一文目からそんなことがわかってしまうくらい貫禄がある。
シェイクスピアさえ原文で読んだことがないし、ディケンズももちろん原文では読んでいません。でも、これは英語だとすごくリズムがいいのだろうなと思ってYouTubeで朗読を聞いてみたらすごく耳に心地良かったです。アーヴィングはよく車の中でディケンズをリスニングするそうです。英語独特の、それもイギリス英語ならではの語彙の多さと表現力の巧みさがあります。アメリカ英語では語彙力はあまり問われず、むしろ簡単な語彙で複雑なことを説明するイメージですが、イギリスだと単語がとっても丁寧に行き渡っている感じがある。ボンヤリしておらず、はまるところにしっかりはまる。だからこそ、直接的には批判せずとも皮肉な言葉で当時の悪政だったり暴力的な人々を、批判していることがわかる。紳士的な言葉でいかに悪口をいうか大会があったら当然イギリス人の勝利でしょう。笑

JKローリングは、フランス留学中に休日はずっとこの『二都物語』を読んでいたらしいです。実はその話をきいて私はこれを読もうと決めました!ハリーポッターシリーズは、かなり二都物語から影響を受けていることがわかりました。シドニー・カートンのルーシーへの身をも捧げる献身的な愛は、スネイプがリリーに対して抱いていたものに似ているなと思いました。このスネイプやカートンしかり、ローリー氏やミスプロスなど、イギリスの小説には執事や家政婦さんたちなどの、仕事や主人に対する誇りを持った仕え方がよく描かれていると思います。カズオイシグロの『日の名残り』もそうだった。これは現代のイギリスでも残っているのかはよくわからない(多分ないと思う)ですが、たぶん階級制度ありきのものだったのかもしれません。いまだにイギリスには女王がいてロイヤルファミリーが残っている、そして人々の中にはそんなイギリス王室を心から誇りをもって尊敬して崇めていたりすることもあるのでしょう。そういう、なんというか、利益を求めないキリスト教的な献身の態度が物語に深みをあたえるなぁと思います。昨今超資本主義的な社会のなかでは、とにかく自分が成功すればいい、お金もちになることが大事だ、という風潮があるけど、お金じゃなくて自分が誇りに思えるような生き方をすることが大切だな…としみじみ思ったりした。

あとはフランス革命!今までフランス側からの描かれ方しか知らなかったし、歴史の教科書で文章でこんなことがあった、王政がなくなったとかしか知らなかったけど、この小説の中での革命の描かれ方は社会が崩壊していてとても怖かった。王政にあずかった人々も汚いひどい人たちばかりだし、革命を起こした過激な人たちも殺しを無差別にしていて恐ろしかった。革命、というのは聞こえがよくかっこいいものだと思っていたけど、想像以上に血みどろで、誰もが幸せではなかった。この後にはフランスはだんだんと落ち着いて今のような民主主義が獲得されるけど、その前には本当に本当に大混乱の時代があったんだな…。今コロナで日々怖いけど、フランス革命時に比べたらまだ生きていけてる感じがある。『レミゼラブル』も読んでみたくなった。ハリウッド映画のほうはもしかして美化されすぎているんじゃないか?と思った、あれをみただけじゃ実は何もわかっていないのかも。

こういうの子どものときに読んでいたかったなぁと思うんだけど、大人になって少しだけでも歴史を勉強したりフランス語や英語をわかるようになってから読んだからこそ楽しめたところも多かったです!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年3月9日
読了日 : 2020年3月7日
本棚登録日 : 2020年3月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする