さい果て (文春文庫 つ 3-11)

著者 :
  • 文藝春秋 (1994年11月10日発売)
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本棚登録 : 52
感想 : 8
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第一章春遠くの出だしがよかった。この作品は好きだと思った気がする。春遠くは全編通してよかった。とくにひとりで山形にいこうとする妻の姿がいい。
連作として描かれているその後の風花とさい果ては段々と自分の中で盛り下がっていったと思う。単純に起伏があるかどうか(これは展開に限ったことではない)という意味で、春遠くを読んでいたときの高揚感がこなかった。
第四章玩具は芥川賞受賞作なこともあったのか、個人的には好きだった。選評では狭い範囲の話だと言われてそこまでの好評ではないのだが、とくに夫が丸々とした金魚を持ったところが艶かしく表現されていて印象に残った。心で嫌々としている夫の習性を結局は尊重してしまう妻の姿に、この夫婦がいかに繋がっているかをみた気がした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年4月19日
読了日 : 2021年4月19日
本棚登録日 : 2021年4月19日

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