二十四の瞳 デジタルリマスター2007 [DVD]

監督 : 木下惠介 
出演 : 高峰秀子  月丘夢路  小林トシ子  井川邦子  田村高廣  笠智衆 
  • 松竹ホームビデオ
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感想 : 17
5

学校で映画鑑賞ということで見ました。

涙しました。名作ですね。教師と生徒との愛情の物語でもあり、また優れた反戦映画の一つだと思います。

昭和3年、小豆島にモダンガールでハイカラな、自転車を駆って颯爽と島内を回る女性教師・大石久子が島の分教所に赴任します。物語はその昭和3年からの20年間、戦前・戦中・戦後と時が移ろう中で教え子に愛情を注ぎ、教え子の身を案じ、どこまでも見守り続けた大石先生のお話です。

当時の時代感覚に忠実に描いているのだとは思いますが、何分古い映画ですから、今との時代感覚のずれっぷりに多少戸惑いは覚えました。
まず、自転車・洋服姿が、「ハイカラ」で、「島の中で浮いた存在」になってしまうというあたりからして衝撃的ですね。「いいじゃん、自転車くらい」って、感覚としては言いたくなるのですが、やはり絵として見ると和服の子供や割烹着の親御さんばっかりの中だと、浮きますねぇ……。自動車も走ってますけど、自動車には文句言わないで自転車で文句言うって何だろうねぇ。
ジェンダーで言っても、「男先生」とか「女先生」とか、わざわざ性別を付けて呼び分けたり、「男は戦争、女子どもは見送り」というような雰囲気にはどこか性差別的な雰囲気を感じました。
また、教師の仕事ということで言っても、「何か特定の教科を教えるのが上手い」であるとか、「子どもたちに広く世の中を知ってもらい、自律的に物を考える力を養う」であるとかよりも、「国のために忠誠を誓う子供を育てる」が眼目なんですね。「天皇陛下はどこにおられますか?」と大石先生が生徒に尋ねるシーンにはドキッとしましたし、校長先生が大石先生に忠告するシーンでは「そんなことでアカ(共産党員)だと疑われてハブられるのか……」と思ってしまいました。
要は、その辺の、当時の時代感覚を知り、今の時代とのズレを感じることが出来ただけでも、私からすれば大きなことだったと思っていることです。

それを踏まえたうえでも、やはり、大石先生はいい先生ですね。「小石先生」と呼ばれ、「泣きミソ先生」と呼ばれるその呼び名に、単純なからかいではない、どこか先生に対する親しみを覚えます。一見、教え子と一緒に遊んだり、歌ったりしているばかりで、教え子の悩みに対してはぼやっとしたことしか言えずにおろおろするばかりの情けない先生のようにも見えますが、そういう先生こそ貴重なのではないでしょうかね。
楽しいときは一緒に笑い、悲しい時つらい時は一緒に泣くだけ。これだけのことなんですが、そこにとても深い、温かい愛情のようなものを感じるのは、そこに自分たちには欠けてしまっている大事な何かがあると感じるのは、私だけでしょうか。
「いくじなし」「泣きミソ」。こういう言葉でもって自分の弱さを否定して、世のためお国のためと強くなろうとするあり方が、結局人を殺していったのではないか。そんなことを考えさせられた映画でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: DVD
感想投稿日 : 2016年9月10日
読了日 : 2016年9月10日
本棚登録日 : 2016年9月10日

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