公器の幻影

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  • 小学館 (2015年6月1日発売)
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 日本人患者の越境移植というテーマをスタートとして、臓器提供意思表示カード、臨床的脳死診断と法的脳死判定、ドナーの立場とレシピエントの立場、救急救命医学会と移植学会の相克・・・等、臓器提供、移植医療に関する問題が示されながら、全国紙の遊軍記者が最終的に真実を記事としてスッパ抜くに至る逡巡――報道の正義なのか、あるいは功名心なのか――綴られてゆく。 

 「ペンは剣よりも強し」というのは真実であろう。しかし、ひとつの出来事からは無数の真実が生まれる。それらの真実からひとつの真実を選択し報道する人間――記者の判断の有り様によってはペンは凶器になることもけだし真実である。更には、最終的に記事になる前には社風、社の立ち位置からのバイアスが加わり、記者の本旨が変節してしまうこともある。

(内容紹介)
 東西新聞社会部の鹿島謙吾は、中国の西安で金銭が絡み死刑囚の臓器が日本人患者に移植されているという事実を突き止める。
 記事を掲載すると、中国政府は強く反発し、日本国内でも臓器提供の要件緩和を目指す法案が動き出す。
 臓器移植法案をめぐり蠢く政治家たち。鹿島はさらに脳死判定におけるデータ改竄と違法な政治献金を追うが、それを公にすることは移植手術を待つ患者たちの希望を打ち砕くことにもなるのだ。正義か、信条か、功名心か、鹿島の決断は……。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年7月12日
読了日 : 2015年7月12日
本棚登録日 : 2015年7月12日

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