「生存者」と呼ばれる子どもたち 児童虐待を生き抜いて

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年5月11日発売)
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本棚登録 : 92
感想 : 11
5

10年以上前の本になるのだが、いまだに虐待の被害を受けている子供がいる以上は、この本に描かれている事もまだまだリアルな話なのだろう。
冒頭から残酷すぎる虐待の事例から始まる。それから身体的虐待、重度なネグレクト、性的虐待、心理的虐待で心身ともに大きく傷つけられた子供の事例が描かれている。どれも残酷すぎて現実なのかと目を逸らしたくなるようなものばかり。そして傷ついた子供だちの異常な行動(奇声を上げる、暴力、自傷行為)を目の当たりにすると、虐待さえ受けていなければこうならなかったのにと心が痛む。虐待が子供を変えてしまったのだ。そしてその子供達と必死で向き合う著者をはじめ施設の職員の方々には頭が下がる思いだ。夜逃げや暴力、時には自殺を試みる子供達に対して子供も職員も毎日命をかけて生活している。回復に向かった子供もいれば、半ば途中で施設を出てしまった子もいる。施設の基準上、いずれは子供も社会に出なければならない。そのためにも自力で生きていけるような先を見据えた支援をしている。傷ついた子供達にどのような支援をしているのかも具体的に書かれていた。
そして、後半はなぜ虐待を起こしてしまうのかについて書かれている。虐待する親のタイプの分析もついている。虐待は特別な人がするのではなく一見普通の人や誰でも引き起こす可能性がある。今後虐待を引き起こさないためにどうしたら良いか書かれていて、自分も気をつけなければならないと気付かされた。
しかし、この本を読み終わって何より切ないのは、治療が終わっても終わらなくても、心身に大きな傷を抱えながら社会に出て自分でどうにかしていかなければならないと言う事だ。本人は何も悪くないのに生きづらさを持ったまま残りの人生を送る事になる。もちろん支援先はあるだろうが施設のような所はないだろう。もちろん虐待がなくなる事が先決なのだが、『サバイバー』にこの先も救いがあるような社会になって欲しい。
子供に関わる人だけでなく、多くの人に読んでもらいたい本だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年4月24日
読了日 : 2023年4月24日
本棚登録日 : 2023年4月22日

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