間の楔6 (キャラ文庫 よ 1-10)

著者 :
  • 徳間書店 (2010年1月23日発売)
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感想 : 18
5

イアソンがリキをペットとして飼う。
その代償が支払われた最後、かな。

あとがきの「絶対に覆らないヒエラルキーの住人であるイアソンとリキの終わり方はあれしかないのかなぁ…と。」という言葉の重さが心底身に染みてつらくなる最後。
カッツェさんの口にする「ああいう形でしか成就できない」愛。

私は最初、その最期のシーンでは泣かなかったというか、どうしようもない理不尽の果ての形に共に逝く二人の姿を穏やかな気持ちになって読んでいたんだが、カッツェさんの涙をこぼすシーンで一気に泣けてしまいました。

あぁ、そうだ。人が泣くって、誰かを悼むってこんな感じだった、って急に思い出したんだ。

あと、これは私の妄想かもしれないけど。
イアソンはブラック・ムーンでリキと共に逝けなかったんじゃないかって。

おそらくブラック・ムーンは麻薬の大量服用による呼吸抑制のち死なんだと思う。煙草の煙程度でその量に行き着くかは別として。
呼吸中枢は延髄を作用点としている。延髄は脳の一部だけど、ブロンディーの脳はあくまで思考としての脳の設定っぽいし、死に程遠いブロンディーに呼吸中枢詰め込んだ延髄設定してなさそう。

だからイアソンは抱き寄せたリキの最期を独りずっと見つめていたんじゃないかって。
再生不可能になる瓦礫が自分とリキを押し潰すその時まで…。

誰にもどうしようもない終わり方だったんだと思う。
それぞれがそれぞれのプライドをかけて、生き様を語って、譲れないものを求めて。
誰にもどうしようもなかった。
リキとイアソンが出会って、惹かれた。
好きだの愛だの最後まで語ることはなかったけど、共にいたいと願った。
だから、こうでしか終われないと分かってるけどつらいもんはつらいわ…。

けど、すごいよね。好きだ愛してると語られなくても二人は間違いなく深いところで繋がっているのだと分かる描写は。
その行動の端々に愛おしいと、離れられないと滲んでいるのは。
抱き締めるだけで充分だと思ったし、抱き締めることでしか伝えられなかった二人の愛。
ここまで潔いともうしょうがないとも思ってくる。

とは言えカッツェさん、どうしてブラック・ムーン2本常備してたの…。
いつの日かの死を見つめながら、共に逝く誰かを探してたとかじゃないよね?とそれはそれでつらくなりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: BL小説
感想投稿日 : 2016年9月24日
読了日 : 2016年9月24日
本棚登録日 : 2016年9月24日

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