インフルエンス

著者 :
  • 文藝春秋 (2017年11月27日発売)
3.45
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本棚登録 : 1184
感想 : 177
3

読書備忘録698号。
★★★☆。

ロードバイクレースシリーズで大ファンになった作家さんです。

表題のインフルエンス。インフルエンサーという言葉の基本形の単語ですが、なるほど。読後にこの影響・影響力という言葉の力をまざまざと見せつけられました。

物語の冒頭。
ある作家のところに、自分と2人の女性の稀有な物語を小説にしないかという手紙が届く。そして作家は、手紙を出した本人と会うことにした・・・。
興味を唆る出だしです!
そして場面は変わり、大阪の所謂ニュータウンの巨大な団地群。どうやら持ち込まれた物語の内容が語られる構成で進む。

団地で育った少女、戸塚友梨と日野里子。仲良しだった2人は、里子が発した言葉がきっかけでぎくしゃくしてしまう。
それは、里子が祖父と一緒の布団で寝ているということ。それが普通だと思っていたこと。要するに幼女に対する家庭内の性悪戯であった。
里子が晒されている事実から救ってあげられなかった、という気持ちで負い目を感じながら友梨と里子は中学生に。そして、東京からの美女転校生坂崎真帆が登場。
あか抜けた真帆と友達になれて友梨は有頂天になるが、真帆の母親は選民意識が強く、友梨との友達関係を良く思っていなかった。
一方、里子は不良中学生の細尾歩とつるんで学校崩壊の元凶となっていた。
細尾は、友梨が仲良くしていたダウン症の少女を面白半分の暴力で殺害してしまった。そんな様子を里子は笑いながら見ていたことから、友梨は里子と更に距離を置く。そんな時、真帆が団地内で変質者に襲われ、それを助けようとした友梨は変質者を包丁で刺し殺してしまった。しかし、翌日警察に自首したのは里子であった。
なぜ、里子は友梨の身代わりになったのか?
少年院から出てきた里子は友梨に自分の祖父を殺してくれ、と脅迫する。
因果応報。里子が祖父に悪戯されていたことを救えなかった後ろめたさ、変質者を殺したのは自分だと自首できなかった後ろめたさから、友梨は殺害を引き受ける。
決行の日、里子の祖父をベランダから突き落とし殺したのはなんと真帆だった・・・。しかし、転落事故として処理される。
時は流れ、東京に就職した友梨の元に真帆から連絡がくる。
結婚して一女を授かったが、夫からDVを働かれていると。その夫を殺してくれと迫られる友梨。やはり友梨は、里子の祖父の殺害を肩代わりしてくれた後ろめたさから、殺害依頼を引き受ける。そして殺害を実行。
しかし、友梨が殺したのは、里子と結婚して夫となっていた細尾歩であった。
なぜ真帆は、里子の夫を自分の夫と偽って殺害を依頼したのか?
謎が謎を呼ぶ・・・。
そして、物語の最終局面、ちょっとしたどんでん返しの結末。

少女特有の、友情の名の元に行われる束縛、友達の独占、独りぼっちなることに対する脅迫的なまでの恐怖心・・・、すごく息苦しかったです。

終始、陽がささない陰湿で淀んだ空気で満ちる荒廃した団地の描写が気持ちを暗くし、楽しくない読後感でした。笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年11月27日
読了日 : 2022年11月27日
本棚登録日 : 2022年11月27日

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